あなたに合った薬と出会うために
あなたの生活がよりよいものになるように薬について考えてみましょう。
はじめに

総合失調症の治療目標は、症状をコントロールしながら、あなたが自分らしく生活を送ることにあります。 総合失調症の治療の中で、薬物療法は、あなたの回復 (リカバリー)を助ける基本となる治療です。
しかし、薬の効果や副作用の出かた、飲みごこちや使い勝手など、その薬に対する印象は人によって異なるために、治療開始からぴったり合った薬に出会う人もいれば、いくつかの薬を試したあとでやっと自分に合った薬にたどりつく人もいます。
あなたの毎日の生活がより良いものになるように、現在服用している薬があなたに適しているかどうかについて考えることはとても大切なことです。
あなたの将来の夢(希望)は何ですか?
あなたに合った「薬」は、歩きやすい「靴」と似ています

あなたに合った靴を探しましょう!
総合失調症の治療は長期にわたります。「薬」は、用量によっては十分な効果を得られませんし、困った副作用が発現する場合もあります。
また、生活パターンに合った服用回数や剤形*、飲みごこちや使い勝手など、印象の良い薬を選ぶことも、長く飲みつづけるためのポイントです。
*
抗精神病薬の剤形には、経口剤(錠剤、口腔内崩壊錠、液剤、細粒剤)や持続性注射剤(LAI:エル・エイ・アイ)があります。
「薬」を「靴」に例えてみると・・・
あなたの治療目標(夢や希望)
目的にあった靴の種類を選ぶ(スニーカー、ブーツなど)
薬の用量
靴のサイズや重さ
副作用
足のトラブル(靴ずれなど)
剤形や服用回数
あなた好みの色やデザイン
薬に対する印象(飲みごこち、使い勝手)
靴の履きごこち
リカバリーへの道を快適に歩いて行くためには、専門家と相談しながらあなたの足にぴったり合って、長く歩き続けられる、歩きやすい「靴」選びが大切です。
あなたに合った薬と出会うために大切なこと
あなたは、現在服用している薬の効果や副作用、薬に対する印象、生活への影響などについて、どのように思っていますか?毎日飲み続けられそうですか?そして、その思いを主治医の先生や治療スタッフにどのくらい伝えていますか?

あなたが感じていることを積極的に伝えるようにしましょう。

薬の効果や副作用はもちろん、薬に対する印象、毎日の生活で困っている症状などは、あなたに合った薬を探していくための貴重な情報になります。
治療の主役はあなた自身です。
統合失調症は再発しやすい病気です
統合失調症は再発を繰り返しやすい病気で、服薬の中断は再発のリスクであることが知られています。再発を繰り返すと下記のおそれがあります。
精神機能や社会的な機能が低下して、今までできていたことができなくなる
薬が効きにくくなって回復に時間がかかるようになる
多くの方が再入院になる
ただし、主治医の指示通りに服薬を継続すれば、再発のリスクを抑えられることが知られています。
正しい服薬による再発リスクの減少(イメージ)

あなたの現在の状況をチェックしてみましょう①
現在、気になる症状がどのくらいありますか?どの程度生活に影響がありますか?また、その項目について生活上「困っている」かをチェックしてみましょう。


あなたの現在の状況をチェックしてみましょう②


「2.気になる症状」「3.生活のしづらさ」「4.服薬で困っていること・心配なこと」の質問で何か困っている問題があるとチェックされた方は、他の薬への切り替えや剤形の変更などで改善できる可能性があります。
あなたがその改善を希望される場合は、主治医に相談してみましょう。
薬を変えたいと考えているあなたに

薬を十分な期間飲み続けているのに、症状が改善しない、
もしくは副作用や日常生活で困った問題が現れている場合には、
新しい薬への切り替えが検討されることがあります。
薬の切り替えを行うにはいくつかの条件がありますから、
切り替えに伴うリスクを減らすためにも、あなたの現在の状況を確認してみましょう。
切り替えの準備は大丈夫?
薬の切り替えを行うにあたっての確認事項


新しい薬への切り替え方法
薬の切り替えには大きく3つの方法があります。どの方法で行うかは、切り替える理由やあなたの状態(症状や副作用)、薬の種類・剤形によって異なります。



薬の切り替え時に注意しておきたい症状
薬の切り替え中は、体の中で新しい薬が前の薬と置きかわっていきますから、一時的に脳の働きのバランスが崩れて、下記のようなさまざまな症状が発現する可能性があります。しかし、これらの症状の多くは一過性(数日から数週間)であり、経過を観察し、薬の調整をしていくことで次第に軽快していきます。

*錐体外路症状
手足のふるえ、筋肉のこわばり、そわそわ感、落ち着かない感じ、足がムズムズする、など
**悪性症候群
38℃以上の高熱、汗を多くかく、脈が速くなる、筋肉のこわばりが強い、など。まれな副作用ですが、これらの症状が出たらすぐに受診しましょう。
薬の切り替えQ&A
切り替えた薬の効果はどのように判断すればよいのですか?
薬の切り替え完了から6週間は前の薬の影響が残っている可能性がありますから、注意して様子をみていきましょう。十分な量の薬を3カ月くらい飲めば、おそらくどの程度その薬が効いているかどうかわかるでしょう。
新しい薬の効果は、最初の数カ月の間、はっきりせず目立たないことがよくあります。 本人も効いたという自覚がなく、目に見えて症状が変化していないようでも、家族や身近な人たちは「以前の彼女(彼)のようだ」とか、「目の輝きが戻った」など、直観的に変化を感じることがあります。その場合は、「わずかに改善あり」として、6~12か月間はその薬を継続してみていきましょう。
わずかな変化でも、気付いたら医師に伝えるようにしましょう。薬の切り替えの効果や変化などを記録しておくと、医師への情報提供に役立ちます。
新しい薬があまり効かない場合はどうすればよいですか?
まずは主治医の先生もしくは治療スタッフの方々にあなたの症状について報告し、その薬が本当に効かなかったのか確認しましょう。
薬の切り替え完了から3カ月たっても新しい薬があなたに合わなかった場合は、以下が検討されます。
以前の薬に戻す
別の薬に変更する
薬の切り替えは成功したように思うのですが、何かこれから注意することはありますか?
新しい薬がよく効いて症状や副作用が軽減されることはうれしいことですが、その結果、新たな問題が生じることがあります。家族やスタッフは、本人がその問題を乗り越え、病気とうまく折り合い、自分らしい生活が送れるよう援助しましょう。
剤形変更Q&A
どのような剤形があるのですか?
どんな特徴がありますか?どんな剤形があるかは薬によって異なりますが、錠剤や散剤といった一般的なものの他に、水なしで飲める内用液(液剤)や口腔内崩壊錠、その他に1回投与で2〜4週間効果が持続する持続性注射剤(LAI)があります。
あなたの身体にあった薬(成分)に出会えても、飲み忘れがあったり、服用を面倒だと感じたり、服薬で困っていることがあるとせっかくの効果が得られない可能性があります。
同じ薬であれば剤形が変わっても同様の効果が期待できますから、無理なく自分らしい生活をしながら治療を続けられる剤形を選ぶことも大切です。
服薬について不安や心配があれば、主治医に相談してみましょう
持続性注射を使ってみたいのですが、だれでも使えるのですか?
持続性注射(LAI)は同じ成分の飲み薬を使っていて症状が安定している方が対象です。また、一度注射すると2〜4週間効果が長続きする分、副作用が出現すると長く症状が続いてしまうという欠点があります。そのため、事前に主治医と相談して、症状が安定していることを確認したり、飲み薬を飲んで薬との相性を調べたりする必要があります。
LAIの使用を希望される場合は、まず主治医にあなたの希望を伝えて、心配なことがあれば聞いてみましょう。
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