家族の支援ガイド

統合失調症について、家族の方々に知っておいてほしいことをまとめました。

5.家族の対応ABC

何よりも大切なことは、まずご家族が病気に対する偏見・スティグマを乗り越えることです。統合失調症を恥ずかしいと思ったり、隠そうとすることは、知らず知らずに本人へ大きなプレッシャーを与えることになります。病気に関する正しい知識を持つことが、身近な人たちに求められる最初の課題です。

統合失調症を発症した人は、今までに体験したことのない不安な状態におかれています。妄想により他人への不信感が増し、閉じこもりになりがちですから、まずご家族が「私たちはあなたの味方」というメッセージを送ってあげることが大切です。

統合失調症の患者さんは周囲の人たちの接し方にとても敏感です。特にご家族をはじめとする身近な人たちの感情の表し方は、病気の再発に大きな影響を与えるといわれています。この感情の表し方(表情、口調、態度など)はその字のとおり「感情表出」といい、英語のExpressed Emotionの頭文字をとってEEとも呼ばれます。
患者さんに対して強い感情表出が向けられることを「高EE」と呼び、再発の危険性が高い人間関係と評価しています。高EEといわれる感情表出には次の3つのタイプがあります。

1.批判的な感情表出

「何もしないでごろごろしている」「いい年をして仕事もしない」などと、患者さんに対して不満や文句をいうことです。

2.敵意のある感情表出

「いっそ、この子がいなければいい」「一発殴ってやりたい」「この人のせいで私の人生はだいなしになった」などの敵対的な感情をぶつけることです。

3.情緒的に巻き込まれている感情表出

「この子は病人だから私がいてあげないといけない」「この人の気持ちは私にしかわからない」など過保護や過干渉になってしまうことです。すこしのことで泣き崩れたり、冷静さを失うようなことも含まれます。

以上のような高EEレベルのご家族では、患者さんの再発率が高く、逆にEEレベルが低い家族では再発率が低いと報告されています。ただ、誤解してはいけないことは、家族が高EEだからといって、社会的に欠陥があるというわけではありません。ご家族が高EEであることが患者さんを発病させたわけではなく、患者さんが発病したからこそ、ご家族が高EEにならざるをえなかったとも考えられるからです。

EEはあくまでも再発防止の尺度ですから、身近な人たちが自分たちの接し方に再発リスクがないかをよく考えて、そうであれば修正する工夫が必要だということです。 ご家族の気持ちの安定と適度な感情の交流、冷静な対応がご本人にもよい影響を与えます。

統合失調症は再発しやすい病気です。特に発病初期の5~10年間は再発のリスクが高い傾向にあります。
再発を繰り返すと症状が重くなり、回復も困難になっていきます。 再発の兆候は人それぞれ違いますが、患者さん一人に限っていえば、再発するときはいつも同じパターンで始まるのが多いといわれています。よくあるパターンとしては、「眠れなくなる」「イライラがひどくなる」「音に敏感になる」などがあげられます。ご家族がわかる再発のサインとしては次のようなものがあります。

1.

眠れない日が続くようになる。

2.

イライラしている。

3.

食欲が落ちている。

4.

焦りや不安の訴えが多くなる。

5.

発病時の体験を昨日のことのようにいきいきと語るようになる。

6.

そわそわして、落ち着きがなくなる。

7.

うつ症状になり、ぼーっと考え込んだりする。

8.

被害的で、疑い深くなる。

9.

行動的になり、異性にアタックしたり、仕事にトライする。

10.

作業所やデイケアを突然やめて、仕事探しに出る。

以上のように、陽性の表現や陰性の態度、さらに拡大的な行動変化といった多様な症状が現れますが、いずれにしても「いつもと違う」様子が現れたら再発の可能性を疑って、すぐに受診させるようにしましょう。再発初期であれば薬の調整や生活上のアドバイスで切り抜けられることもあります。
また、薬の服用を怠っていたりすると、再発に達する時間が短くなり、受診が間に合わないこともあります。そういう意味でも日常の服薬管理について、ご家族や周りの方が協力することが大切だといえるでしょう。

病気のために生活能力もコミュニケーション能力も落ちているときは、あせらず長い目で見守ってあげましょう。またあまり深刻に考え込まず、ほどほどの距離をとって、お互い息抜きをする時間を持つことも大切です。過剰な介入は本人には負担になることがあるので注意しましょう。