家族の支援ガイド

統合失調症について、家族の方々に知っておいてほしいことをまとめました。

1.どのような病気ですか?

統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。
約100 人に1 人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
薬や精神科リハビリテーションなどの治療によって回復することができます。

発症の要因は?

統合失調症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることが関係しているのではないかといわれています。また、大きなストレスがかかることなども関係あるようです。
遺伝子も関与しているといわれていますが、単純に遺伝子だけの問題ではなく、さまざまな要因が関与していると考えられています。

2.どのような症状ですか?

2-1 陽性症状・陰性症状・認知機能障害

統合失調症の症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けることができます。

3つの症状

陽性症状

陽性症状

妄想

「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。

幻覚

周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、ないはずのものが見えたり(幻視)して、それを現実的な感覚として知覚する。

思考障害

思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。

陰性症状

陰性症状

感情の平板化(感情鈍麻)

喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなる。

思考の貧困

会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。

意欲の欠如

自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。

自閉(社会的引きこもり)

自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。

認知機能障害

記憶力の低下

物事を覚えるのに時間がかかるようになる。

注意・集中力の低下

目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることができなくなる。

判断力の低下

物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、計画を立てたりすることができなくなる。

2-2 病気の経過と症状

統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・休息期(消耗期)・回復期にわけられます。それぞれの病期で特徴的な症状が認められます。

図

不安・孤立・過労・不眠などによるストレスの蓄積は、症状の悪化や再発につながる恐れがあるので注意しましょう。

統合失調症は1日も早く治療を開始したほうが病気の回復が早く、症状も軽くてすみます。まずは専門医に相談しましょう。

前兆期

特に目立った症状はありませんが、何となく変だと感じるようになります。
眠れなかったり、イライラしたり、集中力が低下するなどの症状が続きます。

急性期

幻覚や妄想など不思議な体験をするので、自分の中で何かが変だと感じながらも、自分が病気だと思えず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じたりします。

消耗期(休息期)

幻覚や妄想などの目立った症状は少なくなりますが、元気がなくなったり、やる気が起こらなくなったりします。
これは、急性期に心と体のエネルギーをたくさん使ってしまったことが原因と考えられていますので、薬を飲み続けながら、ゆっくりと十分に休むことが必要です。

回復期

少しずつ元気が出てきて心も体も安定してきますので、焦らず、ゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。
また、再発予防のために薬を忘れずに飲むことが大切です。

3.受診しよう

「医師に診てもらいたい」と思っても、どこに相談すればよいのかわからないという声が数多く寄せられます。精神科医に相談することが一番の近道なのですが、そのためには精神科病院や精神科クリニックに行けばいいのか、あるいは大学病院や総合病院に行くべきなのか、迷う人がいるかもしれません。 迷ったときは、最寄りの保健所や精神保健福祉センターなどに相談してみましょう。かかりつけの医師に紹介してもらうのもいい方法です。相談窓口は精神科病院や精神科クリニックにももちろんあります。

「受診したらすぐ入院」というイメージを持たれている方がいるかもしれませんが、実際は必ずしも入院治療が必要とは限らず、入院の必要がない場合も少なくありません。何より、患者さんが辛そうに見えたり悩んでいる場合は、そのことをご家族が本当に心配しているとご本人に伝えて、受診するように勧めてみましょう。統合失調症は一日も早く治療を開始したほうが病気の回復が早く、症状も軽くてすみます。まずは専門医に相談しましょう。 また、精神科の病気で通院する場合、医療費の90%までを公費と医療保険で負担する「自立支援医療(精神通院)制度」があります。また、自己負担の上限が決められていて上限額以上は免除されます。経済的な負担により通院や服薬が中断しないような制度です。

【参照:「社会復帰に向けて」自立支援医療

クリニック

精神科クリニックあるいはメンタルクリニックと呼ばれ、比較的交通の便のよいところにあります。自由で明るい雰囲気の開放的なところが多く、気軽に利用できます。

日常生活支援のデイケアやデイナイトケアといったサービスを兼ね備えている施設もあり、旅行やスポーツ、レクリエーションなど個々に特徴のあるプログラムを組んでいます。

精神科病院がサテライト施設として開設している場合も多く、入院加療が必要になっても、適切な病院を紹介してくれます。

精神科病院

大学病院やクリニックと比較して、デイケアやレクリエーションなどの設備・スタッフが整っていることが多く、リハビリテーションや、ゆったりしたペースでの療養に向いています。

病棟は急性期・慢性期と病期によって分けられている場合があります。

大学病院・総合病院 多くの診療科を有する大学病院や総合病院の中には、精神科の外来だけでなく、入院施設も完備しているところがあります。成人病や身体損傷を合併する精神疾患の患者さんたちにとっては、他科の専門医も充実しているこうした病院は総合的な治療に適しているといえます。

4.治療はどのように行われますか?

統合失調症は通院・入院のいずれも、抗精神病薬と精神科リハビリテーションによる治療が基本になります。

抗精神病薬は脳内で過剰になっている神経伝達物質の働きを調整し、症状を改善していきます。また抗精神病薬以外にも、抗不安薬や睡眠薬、その他副作用を抑えるための薬が併せて処方されることがあります。処方については、個々の症状に応じて薬の種類や組み合わせを調整していきます。

統合失調症は服薬をやめると再発したり、以前より症状が悪化したりする傾向にあります。治療の期間には個人差があり、回復の仕方も人によって異なります。症状がよくなってきたからといって、自分の判断で勝手に薬を減らしたり、服薬を中断するのは危険です。また、服薬中断の理由の多くに、薬の副作用が挙げられます。しかし副作用への対処法は十分研究されていますから、薬の切り替えなどを医師と相談しながら服薬を継続することが大切です。必ず医師の指示に従うようにしましょう。場合によっては、ご家族や周りの方が服薬に対してサポートしてあげることも必要です。

適切な服薬を続けるためには、服薬時間を一定に保つことが大切です。そのためには起床と就寝、そして食事の時間が決まっていること、つまり規則正しい生活をすることです。またご本人だけでなく、周りの人たちが服薬の時間を気にかけてあげることも、ときには必要です。

薬による治療に併せて、十分に休養をとることも大切です。ご本人が回復を急ぐあまり、かえって悪い状況になることがあります。ご家族をはじめ、周囲の人たちが協力して治療に専念できる環境をつくりましょう。

十分な休養をとって心身の元気を取り戻し、症状も安定してコントロールできるようになればリハビリテーションも行っていきます。ご本人の社会生活感覚を取り戻すために、さまざまな社会復帰のプログラムや支援施設があります。医師やPSW(精神保健福祉士)、作業療法士と相談して、ご本人に合った無理のないリハビリテーション・スケジュールを計画しましょう。

リハビリをした人の約30年後の状態

過去1年に入院していない :82%
週1、2回は友達と会っている :61%
一人以上親友といえる人がいる :68%
過去1年間に働いた経験がある :40%
ほとんど症状が消失している :68%
充実した生活を送っている :73%

(Harding .et.al 1987)

5.家族の対応ABC

何よりも大切なことは、まずご家族が病気に対する偏見・スティグマを乗り越えることです。統合失調症を恥ずかしいと思ったり、隠そうとすることは、知らず知らずに本人へ大きなプレッシャーを与えることになります。病気に関する正しい知識を持つことが、身近な人たちに求められる最初の課題です。

統合失調症を発症した人は、今までに体験したことのない不安な状態におかれています。妄想により他人への不信感が増し、閉じこもりになりがちですから、まずご家族が「私たちはあなたの味方」というメッセージを送ってあげることが大切です。

統合失調症の患者さんは周囲の人たちの接し方にとても敏感です。特にご家族をはじめとする身近な人たちの感情の表し方は、病気の再発に大きな影響を与えるといわれています。この感情の表し方(表情、口調、態度など)はその字のとおり「感情表出」といい、英語のExpressed Emotionの頭文字をとってEEとも呼ばれます。
患者さんに対して強い感情表出が向けられることを「高EE」と呼び、再発の危険性が高い人間関係と評価しています。高EEといわれる感情表出には次の3つのタイプがあります。

1.批判的な感情表出

「何もしないでごろごろしている」「いい年をして仕事もしない」などと、患者さんに対して不満や文句をいうことです。

2.敵意のある感情表出

「いっそ、この子がいなければいい」「一発殴ってやりたい」「この人のせいで私の人生はだいなしになった」などの敵対的な感情をぶつけることです。

3.情緒的に巻き込まれている感情表出

「この子は病人だから私がいてあげないといけない」「この人の気持ちは私にしかわからない」など過保護や過干渉になってしまうことです。すこしのことで泣き崩れたり、冷静さを失うようなことも含まれます。

以上のような高EEレベルのご家族では、患者さんの再発率が高く、逆にEEレベルが低い家族では再発率が低いと報告されています。ただ、誤解してはいけないことは、家族が高EEだからといって、社会的に欠陥があるというわけではありません。ご家族が高EEであることが患者さんを発病させたわけではなく、患者さんが発病したからこそ、ご家族が高EEにならざるをえなかったとも考えられるからです。

EEはあくまでも再発防止の尺度ですから、身近な人たちが自分たちの接し方に再発リスクがないかをよく考えて、そうであれば修正する工夫が必要だということです。 ご家族の気持ちの安定と適度な感情の交流、冷静な対応がご本人にもよい影響を与えます。

統合失調症は再発しやすい病気です。特に発病初期の5~10年間は再発のリスクが高い傾向にあります。
再発を繰り返すと症状が重くなり、回復も困難になっていきます。 再発の兆候は人それぞれ違いますが、患者さん一人に限っていえば、再発するときはいつも同じパターンで始まるのが多いといわれています。よくあるパターンとしては、「眠れなくなる」「イライラがひどくなる」「音に敏感になる」などがあげられます。ご家族がわかる再発のサインとしては次のようなものがあります。

1.

眠れない日が続くようになる。

2.

イライラしている。

3.

食欲が落ちている。

4.

焦りや不安の訴えが多くなる。

5.

発病時の体験を昨日のことのようにいきいきと語るようになる。

6.

そわそわして、落ち着きがなくなる。

7.

うつ症状になり、ぼーっと考え込んだりする。

8.

被害的で、疑い深くなる。

9.

行動的になり、異性にアタックしたり、仕事にトライする。

10.

作業所やデイケアを突然やめて、仕事探しに出る。

以上のように、陽性の表現や陰性の態度、さらに拡大的な行動変化といった多様な症状が現れますが、いずれにしても「いつもと違う」様子が現れたら再発の可能性を疑って、すぐに受診させるようにしましょう。再発初期であれば薬の調整や生活上のアドバイスで切り抜けられることもあります。
また、薬の服用を怠っていたりすると、再発に達する時間が短くなり、受診が間に合わないこともあります。そういう意味でも日常の服薬管理について、ご家族や周りの方が協力することが大切だといえるでしょう。

病気のために生活能力もコミュニケーション能力も落ちているときは、あせらず長い目で見守ってあげましょう。またあまり深刻に考え込まず、ほどほどの距離をとって、お互い息抜きをする時間を持つことも大切です。過剰な介入は本人には負担になることがあるので注意しましょう。

6.医療機関以外で自立支援や相談、情報収集に利用できるもの

ご本人が自立するために、地域活動支援センターやグループホームなどの社会資源は大きな力となります。こうした施設やプログラムは、一人一人が自分に合った無理のないライフスタイルを探し出し、社会参加に近づくきっかけを与えてくれます。ご本人の人生設計をご家族がすべて抱え込まなくてもよいのです。上手に社会資源を活用しましょう。

デイケア

精神科リハビリテーションの一環として、生活技能訓練やレクリエーションなどを行います。参加には医療保険も利用できます。

【参照:「社会復帰に向けて」リハビリテーション

自立訓練(機能訓練・生活訓練)

生活のリズムを身につけたり、就労の訓練を行うための施設です。

【参照:「社会復帰に向けて」就労の場

地域活動支援センター

地域で生活する精神障がい者の日常生活支援と生活上の相談窓口が業務です。デイケア施設、作業所、授産施設等の紹介 はもちろんのこと、日中、作業などの予定のない人は、ここに集まって話をしたりお茶を飲んだりできます。また、食事や入浴のサービスをしているところもあります。

援護寮・福祉ホーム・グループホーム

自立した生活を行う、または目指すために利用できる施設です。

参照:「社会復帰に向けて」暮らす場

生活を支援する制度

精神障がい者保健福祉手帳の交付、自立支援医療(精神通院)制度、障害年金、障害基礎年金、ホームヘルパーの派遣、訪問看護、デイサービス、などがあります。

【参照:「社会復帰に向けて」自立を支援する制度

患者会といわれる、すでに社会復帰を果たしつつある患者さん同士や病院や診療所に通う患者さんが情報交換や交流活動を行うための集まりがあります。ご本人がどのように病気と付き合っていくかなど、同じ病気を持つ人からの視点でお互いに助け合うことができるでしょう。

家族会は、統合失調症などの精神疾患のある患者さんを抱えるご家族が互いに悩みを分かち合い、励まし合う集まりです。全国各地に約1700の家族会があるといわれ、現状の制度の改善を行政や医療機関に働きかけたり、勉強会を行いながら、ご本人の社会復帰を目指して活動しています。
ご家族の皆さんの役割は、患者さんを養ってあげることでも、掃除や洗濯をしてあげることでもありません。かえがえのないご家族の一員であるご本人の精神的な癒しや心の支えになることが、何よりも必要だと思われます。そして、癒しを与える立場のご家族にもまた癒しが必要です。ご家族同士の交流は、悩んでいるのは自分一人ではないことがわかるだけで、気分が楽になったり、話をするだけで気持ちの整理ができたり、ときに思いがけない発見や反省すべき事柄もあるかもしれません。病気の治療にもっとも必要な心の安定感をまずご家族が保つためにも、家族会への参加はとても有意義なことだと思われます。

ご本人やご家族は予想外の障害やさまざまな悩みに取り巻かれる場合もあると思います。医療機関以外にも下記のような相談相手があります。

全国の保健所

保健所管轄区域案内

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/

全国の保健所には精神保健相談員が常駐して、あらゆる相談と医療機関の紹介を行っています。
また各保健所で名称は異なりますが、「精神科救護所」「精神科救急情報センター」「心の相談室」などの相談窓口を設置しています。

全国の精神保健福祉センター一覧

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html

国の定めた法律によって各都道府県に設置された施設です。来所相談窓口、電話相談窓口など、各都道府県が独自の企画力で運営しています。

みんなねっと(公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会)

精神に障害のある方のご家族が結成した団体です。全国のご家族と家族会をつなぎ、精神障がいのあるご本人とご家族が安心して暮らせる社会をめざして支援を行っています。
電話相談も行っています。

http://seishinhoken.jp/

いのちの電話

こころの危機に直面した人のための電話相談室。医療・法律相談も行っています。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/madoguchi/inochi_tel.html