行動を責めずに、
不安を和らげることを目指しましょう

繰り返し買うという行動だけでなく、その背後にある気持ちに目を向けましょう

同じ商品を何度も買うという行動の背景には、不安が隠れていることがあります。こちらに示した例では、健康に対する不安をきっかけに、記憶障害の影響で、不安→買う→安心→忘れる（記憶障害）→また不安→また買う、というサイクルを繰り返しています。

こうした行動は、不安を和らげることで落ちつく可能性があります。行動そのものを責めるのではなく、「健康が心配なんだね」と、不安な気持ちに寄り添うことが大切です。健康に不安を感じている場合は、「健康のために一緒に体操してみようか？」と優しく誘うことで、不安を前向きな行動に変えるきっかけになります。健康を気にする気持ちを受け止めながら、「買わなくても安心できる」環境を一緒に整えていくことが大切です。

ただし、ここに示した出来事は一例に過ぎず、その理由や対処方法は同じではありません。認知症の方に寄り添い、ご本人の状況や気持ちを理解し、それに応じた個別の対応をとることが症状を改善するうえで大切です。

買う機会を減らしましょう

買った商品を目につく場所に置いておくのも記憶を助ける手がかりに

何度も買ってしまう行動には、「買いたくなるきっかけを減らす」という対策も有効です。まずは、カタログやチラシなどを目につかない場所に片づけておくなど、視界に入らない工夫をしましょう。見ると「買いたい」という気持ちが生まれるため、きっかけを減らすことはシンプルながら効果的です。

ショッピング番組をよく見る場合は、特定の番組を非表示に設定できるテレビもありますし、代わりにご本人の好きな録画番組やDVDなどを見る時間を増やして気をそらす方法もあります。また、頻繁に見るショッピング番組があれば、放送時間に散歩や趣味の活動など別の予定を入れるのも効果的です。さらに、買った商品を目につく場所に置いておくと、「もう買ってある」と思い出しやすくなります。認知症の方にとって、視覚的な情報は記憶を助ける手がかりになります。

なお、通信販売で購入した商品は、返品特約がない場合、商品到着日を含めて8日以内であれば送料自己負担で返品できることがあります。一方、返品特約がある場合は、その内容に従って対応する必要があります。何度も買ってしまった場合でも、内容を確認することで対応できることがあると知っておくとよいでしょう。

買う前に立ち止まれる仕組みを作りましょう

電話に「買う前に〇〇さんに相談しよう」とメモを貼るのも一つの方法

認知症の方が同じものを何度も買ってしまう場合、「買う前に相談する」という約束を設けておくのもよいでしょう。たとえば、「買う前に〇〇さんに相談しよう」と書いたメモを電話の近くやよく見る場所に貼っておくことで、視覚的な手がかりとなり、相談することを思い出しやすくなります。

また、特定の通販会社やテレビショッピングを通じて繰り返し注文している場合には、事業者に連絡をして、「本人からの注文は受けないでほしい」と依頼することも一つの方法です。近年では、認知症の方の購買トラブルに対応してくれる業者も増えており、あらかじめ伝えておくことで、無用な注文を防げるケースもあります。家族だけで抱え込まず、こうした事業者との連携も視野に入れて対策を講じることが大切です。ただし、ご本人が注文を拒否されることに対して不満を示すこともあるため、慎重に対応する必要があります。