回復を促す家族の接し方

病気の段階ごとに対応のポイントをまとめましたので、参考になさってみてください。

統合失調症の回復のためには、ご家族の協力が大きな助けになります。 病気を発症された当初は、ご家族も動揺したり混乱されることがあると思いますが、そんな皆様のために、病気の段階ごとに対応のポイントをまとめましたので、参考になさってみてください。

監修:白石弘巳 先生
埼玉県済生会なでしこメンタルクリニック院長
東洋大学名誉教授

3.ステージ別 本人との向き合い方ガイド

発症期

第一目標は医療機関の受診です

いつもとちがう変わった行動をとるなど、様子がおかしいと気づいたら、すみやかに医療機関に相談してみましょう。早期に医療機関を受診して治療を開始することが早期回復につながります

診断を受けて、ご家族が混乱したり戸惑いや不安になったりするのは当然のことです

病気について正しく理解し、自分を責めないようにしましょう

本人の気持ちにやさしく寄り添い、静かで刺激の少ない家庭環境を確保しましょう

受診を説得するためのポイント

受診の必要性に関して、一貫した考えと態度で
本人になにも言わず、だまして連れて行くと家族と病院への不信感をつのらせ、治療も上手く行きません。本人の不安に耳を傾けながら、落ち着いて根気よく、やさしく説得することが大切です

本人の訴えに耳を傾ける
話のつじつまが合わない点を指摘するより、受診の必要性に絞って、繰り返し伝える

ご家族が心配していることを誠実に伝える
本人の症状とつらさを聞き取るよう努める

入院

長い目で見守りましょう

まずご家族が落ち着くことです

入院直後は環境の変化が原因で悪化する人がいますが、薬物療法の効果が出てくると徐々におさまるので、一喜一憂しないようにしましょう

見舞うときは温かく、あせらず見守る態度が大切です

できない約束はせず、約束したことは守るようにしましょう

病気のための言動に振り回されないようにしましょう

急性期に入院治療が必要な場合でも、多くの方は1~6カ月ほどで退院し、地域で暮らしながら通院治療をしています。

退院後、社会復帰

あせらず一歩一歩、再発防止

退院後は、幻覚や妄想などによる激しい興奮が落ち着いているものの、ひきこもりや意欲の低下がしばしばみられます。赤ちゃん返りや依存的になったり、身の回りに無頓着になったりする場合もあります。生活能力やコミュニケーション能力が落ちているのは病気のためですので、あせらず長い目で見守りましょう

本人が自分の力で生活できるように、できることから始めるように励ましていきましょう。また、できないところを補いつつ温かく見守りましょう

本人に回復のプロセスを説明し、生活の目標について話し合いましょう

薬の継続的な服用の必要性を説明し、再発予防に努めましょう

あまり深刻に考えず、ほどほどの距離をとって、お互いに息抜きをする時間をもつことも大切です。ご家族が共倒れにならないよう、支援サービスを上手く利用しましょう

自宅療養のポイント

【コラム】 統合失調症治療で目指す「回復」とは

統合失調症は急性期の症状がおさまってからも再発を防ぐために長期にわたって薬物治療を続ける必要があります。病気になる以前とまったく同じ状態に戻ることを目標にするのではなく、あせらずできることから一つずつ生活の中の課題を克服して「新しいゴール」を見つけることが大切です。

リハビリテーションの目標

社会復帰に向けて、次のような目標をもってリハビリテーション(リハビリ)をはじめてみましょう。

人とのかかわり

家族以外のさまざまな人と出会い、一緒に活動することで対人関係や協調性を身につけることができます。

役割

役割を果たして人から感謝されることで充実感とやる気が出て、自信の回復につながります。

生活リズム

継続することで、療養生活で乱れがちな生活リズムを規則正しく整えることができます。

就労準備

就労に向けて、職業訓練を行ったり、職探しの方法を学んだりできるリハビリがあります。

居場所

自宅や病院の他にも本人が安心して過ごせる居場所ができることで生活の幅が広がります。

自分らしい暮らし

薬の作用・副作用や再発のサインなどを正しく理解したり、対人関係のコツや生活の仕方などを学んだりすることで、病気があっても自分らしく暮らす方法を身につけます。