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脳科学から見た統合失調症

2.統合失調症で考えられている病気の仕組み

2-5統合失調症の成因についての仮説

統合失調症の神経発達障がい仮説

統合失調症の病的な状態を説明するものとして、ドーパミン仮説やグルタミン仮説を説明してきました。 それでは、統合失調症はどのような仕組みで発症するのでしょうか。
統合失調症の成り立ちについての仮説で有名なものに、神経発達障害仮説があります。この仮説を簡単に説明します。

図6.統合失調症の病因仮説

統合失調症では出生前後からのヒトの神経系の発達に何らかの障害があり、病気のなりやすさ(発症脆弱性といいます)が形成されると考えます。 このように脆弱性を持った子供が、思春期以降外界からのさまざまな心理的社会的なストレスを受けると統合失調症がはじめて発症するとするのです。
この仮説を支持する所見として、統合失調症の患者さんは出産前後に産科的な障害を経験する率が高いことや、脳の海馬や内嗅皮質とよばれる部位などで神経細胞の発達が障害された痕跡のあることなどがあげられています。
また、この仮説によれば、統合失調症が思春期以降に発症しやすいことも説明できます。神経発達障害仮説では、患者さん自身の持っている脆弱性に、環境からのさまざまなストレスが加わり、はじめて発症するという、統合失調症の複雑な発症過程を説明できることが特徴です。
図6にこのあらましを模式図で示しました。 多くの要因が統合失調症の発症に関わっています。
ここで、統合失調症の発症脆弱性に遺伝的な要因のあることは事実ですが、この点については第4章で説明します。

統合失調症での認知機能の障がい

統合失調症の治療目標の一つとして、再発を防ぐということがあります。統合失調症の多くの患者さんは治療に反応して症状は改善しますが、残念ながら再発が多いのも事実です。再発の数が多いほど、また治療までの期間が長いほど、つまり病的な状態にある期間が長いほど、自発性の低下や社会からの引きこもりなどの後遺症に相当する症状が重くなっていきます。このような患者さんを対象にして、何年も経時的にCTやMRIで脳の形の変化を見ていくと、症状の重い患者さんほど、大脳が小さくなっていくのではないかという研究が最近報告されています。小さくなるといっても、認知症の患者さんのように目で見て明らかに萎縮していくというのではありません。ただ、同じような病的な過程(神経変性過程)が統合失調症でも速さの違いはあってもゆっくりと進行しているのではないかというのです。この仮説を統合失調症の神経変性仮説といい、最近注目されています。それは、早期に病気の治療を開始し、その後も再発を防ぐことができれば、このような神経の変性過程を停止させることができ、病気をそれ以上進行させないことにも繋がるからです(図7)。

図7.統合失調症における症状と病態の時間的経過

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