薬物治療が必要とされる場合と使用される薬

自閉スペクトラム症や、併存する障害の多くに対する主な治療法は、「療育」と「生活環境の調整」です。ただし、てんかん発作がある場合には薬物療法が必要ですし、睡眠障害、不注意、多動性、衝動性、自傷行為、興奮、攻撃性などによって生活に支障を来している場合にも、薬物治療が検討されることがあります。また、二次的な問題として精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)や問題行動(暴言・暴力、自傷行為など)が出現した場合にも、薬物治療が検討されます。

薬物治療は、少ない用量から開始して、副作用が出ていないか確認しながら、効果がみられる最小量を使って慎重に行います。症状を抑えることで、落ち着いた生活を送り、本来もっている能力を発揮できるようになることが期待できます。ただし、副作用が起こることも考えられますから、主治医とよく相談しながら、納得した上で指示どおりに服薬してください。副作用と思われる症状や気になることがあれば、速やかに主治医と相談しましょう。
薬物治療で使用されるのは次のような薬です。

薬の種類 対象となる疾患・障害・症状
抗てんかん薬 てんかん
睡眠薬
(睡眠導入薬)
睡眠障害
(よく眠れない、寝付きが悪い、早朝に目が覚める、睡眠のリズムが狂うなど)
気分安定薬 双極性障害
ADHD治療薬 注意欠如・多動症
(不注意、多動、衝動性)
非定型
抗精神病薬
易興奮性
(興奮、パニック、攻撃的行動など)
抗不安薬 不安障害
抗うつ薬 うつ症状、強迫性障害

薬を飲むのが苦手なお子さんは、服薬しやすい剤形(粉剤、液剤、口腔内崩壊錠、シロップ剤など)について、主治医に相談してみましょう。