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市民公開講座 2014「うつ病を知る日」東京 うつ病予防のためのセルフケア -食事・運動の予防効果- (独)国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部 西 大輔先生

オメガ3系脂肪酸

うつ病をはじめとする精神疾患について、予防効果が実証されている具体的な方法はまだありません。平成24年に消費者庁が発表した機能性評価モデル事業の結果によれば、うつ病の予防効果が示唆されてきたオメガ3系脂肪酸は、うつ症状の緩和と発生率低下については6段階の総合評価でC評価(機能性について示唆的な根拠がある)を受けました。一方で、心血管疾患リスク低減、血中中性脂肪低下作用、関節リウマチ症状緩和についてはA評価(機能性について明確で十分な根拠がある)とされました。オメガ3系脂肪酸は、身体の健康には好影響を与えると考えられ、うつ病への効果はまだ明らかではありませんが期待されている、というのが現状です。
オメガ3系脂肪酸はおもに青魚に豊富に含まれ、植物油脂(トウモロコシやヒマワリなど)に含まれるオメガ6系脂肪酸と1:4の比率で摂取することが望ましいとされていますが、この比率を守って食事を摂ることはなかなか難しいのです。ファストフードや揚げ物などを食べれば、当然、オメガ6系脂肪酸を多く摂取することになりますし、加工食品のほとんどに植物油脂が含まれているからです。
オメガ3系脂肪酸には抗炎症作用が期待されるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)があり、逆にオメガ6系脂肪酸には炎症を引き起こす物質を産生するアラキドン酸(AA)があります。オメガ3系脂肪酸も6系脂肪酸も、体内では同じ酵素で代謝されるので、摂取量のバランスが崩れてオメガ6系脂肪酸に偏ってしまうと、オメガ3系脂肪酸が代謝されにくくなってしまいます。
年間の魚の消費量と大うつ病の1年有病率を比較した海外の研究によると、世界有数の魚消費国である日本はうつ病が少ないという結果が示されています。これは1998年の論文で、その後、魚の消費量は年々減少傾向にあり、その一方でファストフードをはじめとする欧米型の食事を摂取する機会が増加しています。オメガ3系脂肪酸と6系脂肪酸はバランスよく摂取することが大切だということを理解して、毎日の食生活を見なおしていただければいと思います。

食事パターン

個別の栄養素のバランスを考えることも大切ですが、重要なのはどのような食事を摂るか、食事をトータルで考えることです。私たちは様々な食品を一緒に摂っているからです。厚生労働省・農林水産省が策定している「食事バランスガイド」は、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいのか、食事の望ましい組み合わせとおおよその量を示しているので参考になります(図3)。

図3 食事バランスガイド(厚生労働省・農林水産省策定)

また、栄養素同士の相互作用なども含めて研究しているのが食事パターン分析です。食事を「健康日本食」、「動物性食品」、「洋風朝食」の3パターンに分けて実施した研究では、ご飯を中心に、魚や肉、野菜、海藻、豆類などの多様なおかずを組み合わせた健康日本食、いわゆる日本の伝統的な食事を食べている群で抑うつ症状が少ないという結果が示されています。海外の研究でも、自然食品(whole food)やその地域の伝統食を食べている群はうつが少なく、加工食品や西洋的な食事を食べている群ではうつが多いという、ほぼ同一の結果が出ています。オメガ6系脂肪酸が多く含まれる加工食品を食べている群でうつが多いことは、先ほどのオメガ3系脂肪酸とのバランスが大切だということと矛盾しない結果となっています。

運動

うつ症状に対する運動の改善効果については国内外で広く研究されていて、その多くが有効性を示しています。また、運動はメタボをはじめとする生活習慣病の予防においても重要ですから、段階に応じて無理なく始めることが大切です。
運動に関する意識は、運動への感心が低い「前熟考ステージ」から継続的に運動している「維持ステージ」までの5つのステージに分けることができます。図4にそれぞれのステージにいる人の割合を示します。


図4 運動に関する意識の5つのステージと各ステージにいる人の割合

「前熟考ステージ」は、現在運動をしておらず、近い将来も運動をしようと思っていない人です。運動しないことが自分の健康にどういう影響があるのか、まだ気づいていません。このステージを抜け出すには、まずは運動のメリットを知ることです。運動によって脳の海馬の体積が増したり、BDNFという脳の栄養因子が増えたりという研究報告もありますし、身体や心が苦しい状態で自分をコントロールする練習になったり、うつ病と密接な関係がある生活習慣病を防いだりすることが期待できます。運動によって質の良い深い睡眠が増えるという効果も考えられます。運動に対する適切な知識をもつことや、運動している友人からメリットを聞いてみたり、「このままではまずい」という感情的経験をしたりすることも意識を高めるのに役立ちます。
「熟考ステージ」は、今は運動していないものの、近い将来に運動しようと思っている人です。運動の負担に見合う「スタイルが良くなる」「体重が減る」といったメリットを見出し、運動不足の自分をポジティブにイメージできれば先のステージに進むことができると考えられます。
「準備ステージ」は、気が向いた時に運動するものの定期的にはやっていない人で、何かのきっかけで前のステージに逆戻りしてしまう可能性があります。うまく運動できるという自信を持って、運動をはじめることを周囲の人に宣言したり、自分との契約書を作ってみたりすると運動を続けるモチベーションになるかもしれません。
「実行ステージ」は定期的な運動をはじめたばかりで、まだ6カ月以上継続していない方です。自転車通勤など、運動しやすい環境づくりに務めることでスムーズに継続できる可能性があります。マラソン大会やフットサル大会などのイベントへの参加もモチベーションを高めるのに役立ちます。
「維持ステージ」は、運動を6カ月以上継続できている人です。一緒に汗を流す仲間がいると運動を継続する上で力になります。
運動するためのモチベーションを高めるためには、目標設定を低めに設定して、とにかく運動を楽しむことが大切です。

生活習慣で自分自身に気づく

メンタルヘルスにはさまざまな要因が関わっていて、栄養や運動もそのごく一部にすぎませんから、それだけに気をつけていれば大丈夫というものではありません。しかし栄養や運動は自分自身でコントロールすることができるものです。うつ病の予防に最も大切なことは「自分自身に気づくこと」だと私は考えています。自分の状態やパターンに気づくことができれば、さまざまなことに対処することが可能になります。栄養や運動、睡眠も含めた日々の生活習慣はセルフケアの基本としてそれ自体も大切ですし、それを通じて「自分への気づき」を深められるという点からも、うつ病予防に非常に重要だと思います。

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