HOME > 統合失調症について > 脳科学から見た統合失調症 > 4.統合失調症の遺伝子研究

脳科学から見た統合失調症

4.統合失調症の遺伝子研究

4-2-1統合失調症での“遺伝”の意味

先に述べた遺伝子の働きから考えると、遺伝子の働きに障害があれば、何らかの病的な状態が引き起こされそうだということも理解できるでしょう。 しかし、ほとんどの病気はその仕組みがよくわかっていません。
そこで、最初に病気を引き起こす遺伝子を見つければ、その後の研究に大きな力となります。 医学研究者が病気の遺伝子探しに熱中する理由の一つはこれにあります。実際、今まで遺伝子疾患とよばれている病気のなかで、ハンチントン舞踏病、あるタイプの筋ジストロフィー、のうほう性線維症などの原因遺伝子が見つけ出されています。
しかし、すべての病気が必ずしも遺伝子の異常だけで説明できるわけではありません。 たとえば、先に述べたハンチントン舞踏病などは、一つの遺伝子の異常によって生じることがわかっています。 これらは単一遺伝疾患とよばれます。 これに対して、多くの遺伝子が関係していて、一つの遺伝子の異常だけでは病気は起こらない病気を多因子疾患といいます。
統合失調症は本態性高血圧、糖尿病、ぜんそくなどとおなじような多因子疾患です。 また、ヒトの病気のほとんどは、実際は多くの遺伝子と多くの環境との相互作用のなかから発病してきます。
たとえば、糖尿病や高血圧などは、なりやすさが遺伝するために、両親がこれらの病気にかかっていると、発病しやすいという事実はご存じでしょう。 しかし、それでも本人が糖尿病や高血圧にならないような食事や生活を送っていれば、発病しないこともあります。 つまり、病気そのものが遺伝するのではなく素因(なりやすさ)が遺伝するといってもいいでしょう。 この素因はスペクトルのように、ある人が精神疾患にかかりやすい側から、かかりにくい側まで連続的に広がっています。
その意味で、この素因は程度の差はあれだれでも持っているものです。

ページの先頭に戻る

4-2-2統合失調症における遺伝と環境の役割

図3.統合失調症の発症率(%)(ゴッテスマンによる)
図を拡大

統合失調症のなりやすさは親から子へと伝わっていきます。 したがって、親が統合失調症であると、子どもも統合失調症になる危険率は確かに上昇します。 図3に示したように、両親のどちらかが統合失調症の場合、子供が統合失調症になる危険率は約6倍になるとされます。
ここで6倍というと、とても大変な数字のように思われるかもしれません。
しかし統合失調症の一般での発病率は1%弱ですから、親が統合失調症でも94%の人は統合失調症を発病するわけではありません。発病率はあくまでも比率であることを銘記してください。
一卵性双生児の場合、遺伝子はほぼ同一です。一卵性双生児の一方が統合失調症である場合、もう一方が同じ病気である率は50%であるといわれています。 遺伝子が同じであると発病率はかなり高くはなりますが、100%ではないことをみると、個人差や環境要因も発病に関連していることを示しています。 また、きょうだいだと生育環境も同じになるので、同じ病気になりやすいのではないかと考える人がいるかもしれません。
しかし、生後直ちに別々の家庭で育てられた一卵性双生児の研究(養子研究)でも、同じくらいの発病率が報告されていますので、やはりすべてを環境要因のせいにはできません。
また、環境要因にしても、これが決定的な発病要因となるというものは見つかっていません。 むかし悲惨な母子関係が統合失調症の子どもを作るという説がありましたが、これは現在では否定されています。
また、ここでいう環境因子というのは、遺伝的な因子以外のすべてを指しています。
したがって、その人の住む地域環境、家庭内環境、友人関係、経済的状況、教育歴などにとどまらず、その人が生まれる前の母胎の状況、かかったことのある病気なども含まれています。

ページの先頭に戻る