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脳科学から見た統合失調症

3.統合失調症の治療薬

3-2-1抗精神病薬はどのように作用するか

現在発売されている抗精神病薬は、みな同じように統合失調症に対する効果を持っています。しかし、副作用は薬によって少しずつ違っています。口渇・便秘・かすみ目などは抗コリン作用といって、抗精神病薬が神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻害するためです。
また、立ちくらみや眠気は、神経伝達物質であるアドレナリンやヒスタミンの作用の阻害だろうと考えられています。 このような副作用は、薬を飲む統合失調症の患者さんにとってかなり不快なものです。しかし、副作用は薬ごとに多少の違いがあり、また個人差もかなり大きく、あらかじめ予想するのはなかなかむずかしいのが現実です。 これらの副作用はとくに服薬し始めたころに発現しやすく、しばらく服用していくと慣れが生じて、症状は軽減していきます。
もう一つやっかいな副作用として、錐体外路症状やパーキンソン症状とよばれる身体のこわばりやふるえなどがあります。 これは第2章の図で示したように、抗精神病薬が脳内にあるいくつかのドーパミン系をすべて抑制してしまうためです。ドーパミン経路が遮断されると、抗精神病作用が生じると同時に、黒質線条体ドーパミン経路の遮断により、錐体外路症状もひきおこされてしまいます。 とくに従来から使われている抗精神病薬は、投与量が多くなると、多かれ少なかれこの錐体外路症状をひきおこします。
また、プロラクチンというホルモンの分泌にもドーパミンは関係しており、抗精神病薬はそこに働いてプロラクチンの分泌を増加させます。そのために、女性では生理が止まってしまったり、乳汁の分泌などが見られたりすることもあります。
何年あるいは何十年と抗精神病薬を服用している患者さんの中には、口をもごもごしている人を見かけることがあります。 この、もごもごした口の動きはジスキネジアとよばれる不随意運動です。本人はあまり自覚していませんが、見た目はあまりいいものではありません。 抗精神病薬の長期投与によって発症することがあり、これを遅発性ジスキネジアとよびます。定型抗精神病薬はこの自発性ジスキネジアをおこしやすいといわれています。 これも抗精神病薬による錐体外路症状の一つです。
スウェーデンのファルデという研究者は、第2章で紹介したPETという装置を使って、抗精神病薬を服用している患者さんの脳内のドーパミンD2受容体がどれくらい抗精神病薬によって占拠されているかを調べました(図4)。

図4.抗精神病薬の効果と錐体外路症状の発現の関係を示したファルデによる図
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そうすると、大脳の線条体という領域(錐体外路の主要な部位です)で75~80%以上のドーパミンD2受容体が占拠されると、錐体外路症状が出現することを示しました。
抗精神病薬の投与量を調節して、この占拠率以下になるようにし、同時に少なすぎて抗精神病効果が消えないように、ちょうどよい投与量を見つけられればよいのかもしれません。
しかしそれを実際の治療場面で、個々の患者さんに対して行うことはむずかしかったのです。
このように従来使われてきていた抗精神病薬には、錐体外路症状とプロラクチン分泌という副作用が、程度の差はあっても必ず伴っていました。
これらの抗精神病薬を従来型抗精神病薬とか定型抗精神病薬などとよんでいます。

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