うつ病ABC

8.高齢者のうつ病

年齢を重ねて精神的に安定していると考えられがちな老年期ですが、体力や気力の衰え、健康への不安、親しい人たちの死別、一人暮らしの孤独感などからうつ病になることが意外と多いのです。高齢者のうつ病は、身体の症状が強調されてしまい、うつ病であることが見えにくくなったり、認知症と間違われて見逃されてしまったりすることがありますので注意が必要です。

高齢者のうつ病

高齢者のうつ病の特徴

高齢者のうつ病有病率(ある時点で病気にかかっている人の割合)は13.5%*1と言われていますから、うつ病は認知症と並んで高齢者によくみられる病気の一つです。 厚生労働省の調査によると、性別・年齢階層ごとの気分障害(双極性障害を含む)の患者数は、男性は40歳代で最も多く、女性は30歳代~70歳代まで高い水準で推移していて、特に高齢者では男性に比べて女性の患者が非常に多い傾向が明らかになっています。

うつ病・双極性障害の性別・年齢階層別患者数

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001103073(表62 より作成)

高齢者のうつ病は、若い世代のうつ病と比べてさまざまな喪失体験がきっかけとなりやすいことが知られています。具体的には、老化による身体・知的機能の低下や配偶者や知人・友人との死別、定年退職による社会的役割の喪失などがあげられます。

高齢者のうつ病の特徴

高齢者のうつ病では、抑うつ気分のような精神症状が目立たず、耳鳴り、めまい、ふらつき、手足のしびれなど自律神経症状の訴えや、頭痛、腰痛、胃部不快感などの不定愁訴(とくに原因がなく、なんとなく身体のあちこちの調子が悪いという訴え)が特徴的です。 また、「物忘れが増えた」と訴えたり、心気傾向(検査をしても特に異常が認められないのに過度に自身の健康を心配し、悩んでしまう)が強く、「心臓が動いていない」「胃の中に虫がいる」のような妄想(心気妄想)が現れたりすることも特徴の一つです。ほかにも貧困妄想(実際にはお金があるのに「まったくお金がない」と考えてしまう)や罪業妄想(自分を罪深い存在だと自責の念にとらわれてしまう)などが起こることがあります。

高齢者のうつ病では、周囲の人も患者自身もうつ症状を「年だからしょうがない」と考えて受診せずに放っておいたり、受診しても精神症状については医師に話さず、主に身体の痛みや不調などの身体症状を訴えたりすることが多いために見過ごされ、重症化してしまうことがあります。高齢者は身体疾患を合併している場合が多く、それらの背景にうつ病が隠れてしまいやすいことも高齢者のうつ病の特徴といえます。
*1 Beekman, A.T. et al.: Br. J. Psychiatry. 174, 307-311, 1999

高齢者のうつ病の危険因子

高齢者のうつ病の危険因子として、次の6つが考えられます。

うつ病と認知症

うつ病と認知症

高齢者のうつ病では認知症と間違われるケースが少なくありません。認知症というと記憶障害が知られていますが、ほかにも気分の落ち込み、意欲・集中力の低下、イライラ感など、うつ病と非常によく似た症状が現れます。うつ病と認知症を区別するためには、時計を描くテスト(CDT)や詳細な認知機能検査、MRI検査、SPECT、PETなどの脳機能検査があります。
うつ病と認知症を合併している場合もありますから、あなた自身が不安を感じたり、高齢者の家族の心身の不調に気がついたりした場合には、なるべく早くかかりつけ医や精神科で相談してみましょう。

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