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自分の「元気」を取り戻すWRAP研究会

2.“WRAP”で取り戻した笑顔と自信s

WRAP研究会では年に4回、WRAPクラスの集中コースを開いている。クラスは1コマ40分で、集中コースは全12コマを2日間かけて学ぶシステムだ。クラスは10人程度で行われることが多く、参加者はみなさん、チラシやホームページなどでクラスを知って申し込みをされているという。なかには何度も受講されるリピーターもいらっしゃるとか。実際にWRAPクラスを受けてその効果を実感し、現在はファシリテーターとして活躍されている方々にお話を伺ってみた。

田川幸子さん(WRAPファシリテーター)

私は、久留米大学病院のデイケアに通っていましたが、そこでチラシを見て「WRAPクラス」というのがあることを知りました。最初は「なんか面白そう」という軽い気持ちで参加してみましたが、正直なところ、最初のクラスでは特になにか効果を感じたわけではありませんでした。ただ、自由でリラックスした雰囲気で進められるクラスはとても楽しくて、つらい経験を話しても、ファシリテーターやほかの参加者に共感してもらうことができて、「自分が周囲に受け入れられている」という印象が心に残りました。 実はWRAPクラスが終わったその足で、それまで怖くてためらっていた自動車学校に申し込みをしたのです。「自動車を運転できたらいいのに…」と思いながらも、事故を想像して怖くて二の足を踏んでいたのですが、WRAPクラスを受けたことで知らず知らずのうちに元気が湧いていたのかもしれません(笑)。

田川さんはその後、2008年にWRAPファシリテーター研修を受け、現在はファシリテーターとしてクラスを開いたり、研究会の仕事を手伝ったりしている。ファシリテーターになってからはクラスを通じてさまざまな人たちと出会うことも楽しみの一つで、参加者が元気になっていく様子を見ることがとても嬉しく、やりがいを感じているという。

そんな田川さんの「道具箱」には、十分な睡眠、お風呂での読書、アロマを楽しむこと、ヨガ、そして早起きなどが用意してある。以前から規則正しい生活を心がけていたそうだが、WRAPと出会ってからは、「どうすれば自分が元気でいられるか、どういう時に調子が悪くなるのか、ということにより強い関心を抱くようになって、自分自身を客観的に観察するようになりました」という田川さん。現在も調子を崩すことはあるが、異変に気づいた時に調子を戻す対処法が身についたという。また、つらい時にはWRAP研究会のメンバーに「こういう時はどうされていますか」と相談することも元気を取り戻す助けになっているそうだ。

津野稔一さん(WRAP研究会 事務局長、アドバンスレベルWRAPファシリテーター)

WRAPと出会ったことで自分自身をケアできるようになっていることを感じた時、このプログラムの力を実感しました。WRAPに出会う前、うつ病に苦しんでいた私は、精神疾患という大きな困難を頭の上に乗せているような感じがしていました。たとえるならば、それは打ち上げ花火を真下から眺めているような状態で、大きな音と上から降り掛かってくるような花火に圧倒されていたのです。でも、WRAPを通じて自分が元気になってくると、遠くの山の上から打ち上げ花火を眺めるように視点が変わりました。花火だけでなく、その周囲も含めて落ち着いて客観的に見ることができるようになり、そうすることで自分の体調管理もしやすくなったのです。
以前は「病気」にばかり焦点が合っていたのですが、WRAPによって焦点が「元気」に合うようになって「自分自身の元気や望むような生き方をしていいんだ。そのためにできることをしよう」という考え方になると、病気は自分の中のほんの一部に過ぎないということが理解できるようになったのです。

久留米大学病院のデイケアメンバーだった稔一さんは、2007年3月に日本で最初のファシリテーター研修を受講してWRAPファシリテーターとなり、その翌年からはWRAP研究会の事務局長を務めている。2012年からはアドバンスレベルWRAPファシリテーターとしてクラスの開催や研究会の運営に力を注いでいる。

WRAPを学んで最初に抱いたのは、他の参加者とのつながりを通じて「自分のありのまま」を認められているという印象だったという。そして「ここにいてもいいんだ」という喜びを強く感じた稔一さんは、同時に「自分も周囲の人に対してそうしたいという温かい気持ちが湧いてきた」と語る。

稔一さんの「道具箱」の中で、本人が「万能薬」と呼ぶのが「ホームセンターに行くこと」だ。ホームセンターに行っても買い物をする必要はなく、ウィンドウショッピングのように見に行くだけで十分だとか。「元々、建設業に携わっていましたので仕事でホームセンターを利用することは多かったのですが、そこに行くと自分は元気でいられるということ、嫌なことを忘れられるということに気が付きました」と稔一さん。特にネジやキャスターなどの小物を売っているコーナーやドリルの替刃などのアタッチメントのコーナーがお気に入りだ。「調子を維持する時に行くコーナーや調子が乱れてきた時に行くコーナーなど、自分の調子によって行く場所があるんですよ(笑)。そこに行けば大丈夫と思える場所があることは安心につながりますし、そこに行って楽しめるかどうかで自分の体調を確かめることもできるんです」と、ホームセンターの話をしているだけでも稔一さんの顔はほころんでいる。

本格的に調子が崩れてしまう時には、信頼できる人に自分の気持を打ち明ける、薬を飲む、といった対処法が、頭で分かっていてもなかなか実行することができなくなってしまうという。そのためにあらかじめプランに書いておいたり、目につくところに貼っておいたり、生活の中でどう使えるかということが大切だと稔一さんは言う。

稔一さんの元気を支えるもう一つの存在が妻の万起子さんだ。お二人はデイケアメンバーとして知り合ってから7年間の交際を経て、2012年7月にご結婚された。「私が現在のいい状態になれたのはWRAPの力もさることながら、彼女の存在もすごく大きいと思います。行動プランはアクションを起こしてから効果が現れるものですが、彼女はそばにいてくれるだけで私にとってとても大きな力になっています」。

ご主人に寄り添う万起子さんもWRAPファシリテーターを務めている。WRAPを学んでから変わったことは主治医との関係だという。「以前は先生との関係が『お薬飲んでいますか』『飲んでいます』のように、薬や治療に関することを言われるだけの一方的な関係だったんです。でも現在は、私がWRAPの道具を使って自分の健康を守っているという部分を先生も認めてくれていて、生活全般についてお話できるようになったのは大きな変化だと思います」という万起子さん。

津野万起子さん(WRAPファシリテーター)

私のお気に入りの「道具」は可愛い姪っ子に会うこと、手紙を出すことです。もちろん、姪っ子に会うのは相手の都合もあるのでいつでもできるわけではありませんが、時々、妹が連れて遊びに来てくれたりすると元気になれるんです。それに、いつもお気に入りの葉書を手帳に入れておいて、喫茶店などで書いて投函するのが楽しみなんですよ。手紙の場合には出すことも「道具」ですし、相手から返事が届くと、それもまた素敵な「道具」になるのがいいですね。

以前、ファシリテーター研修会に参加した時、アメリカ人のファシリテーターに「あなたはできるから」と繰り返し言われ、自分が人前で上手く話せずに悩んでいたので「どうしてそんな無責任なことをいうんだろう」とイライラしてしまったという。「その時には分からなかったのですが、『あなたならできる』という彼の言葉を今でも思い出して、信じてくれたことが与えてくれる力を今更ながら実感しています」と振り返る万起子さんの表情は自信に溢れている。

現在、津野さんご夫妻は一時療養施設であるレスパイト施設を作ろうと取り組んでいる。「病院に長期入院してしまうのではなく、レスパイト施設があればもう少し気軽にケアを受けることができますし、短期間で回復できればまた違った人生を送ることができるからです」と稔一さん。「病棟に入ってしまうと、患者と医師、あるいは看護師のように『助ける人と助けられる人』の関係性になってしまうんです。助けてもらうと楽なのでまた助けてもらってしまう。もちろん、入院しなくてはならない場合もありますが、病院と自宅以外に、レスパイト施設があれば、そこで同じ困難をもった人たちとコミュニケーションを取りながらお互いに学び合って、前に進むことができると考えています」という津野さんご夫妻は「自分の望む生き方」に向かって着実に歩を進めているようだ。

WRAP研究会のこれから

「WRAP研究会では学会などに呼んでいただいてWRAPクラスのデモンストレーションをしたり、大学からのお問い合わせや書籍のご注文もたくさんいただいたり、その反響の大きさに驚いています」と語る坂本先生。「ソーシャルワーカーや看護師、作業療法士など、病院の専門職の方々を含め、全国の多くの方々がファシリテーター研修会にご参加くださって、あっという間にWRAPが広まりました」と順風満帆のようだが心配なこともあるという。「病院にお勤めの専門職の方がファシリテーターになって病院の患者さんを対象にWRAPクラスを行う場合などは、特にWRAPの特徴であるファシリテーターを含めた参加者同士のフラットな関係作りを意識していくことが大切です。病院での『助ける-助けられる』といった関係が影響しやすいので、WRAPの本質が失われてしまわないように注意しながら、日本中でWRAPを実践していただきたいと思います」。

最後に坂本先生の「道具箱」について聞いてみた。「WRAPクラスで参加者の『道具箱』を聞いてみると、みなさん本当にたくさんの「道具」をお持ちで感心するんです。今の私のお気に入りは食事に気をつけて「まごわやさしい」(豆類、ごま、わかめなどの海藻類、野菜、魚、しいたけなどのきのこ類、いも類)の食品を食べるようにすることです。体に良い物を食べた時には充実感でとても幸せな気持ちになります」とのこと。

元気を取り戻したいと願うすべての人たちにWRAPの輪を広げるべく、これからもWRAP研究会の活動は続く。

NPO法人WRAP研究会
  〒830-0032
  福岡県久留米市東町412-23 アサヒ第3ビル4F
  ホームページ:http://www1.ocn.ne.jp/~wrap_krm/index.html
  お問合わせ: wrap_genki@yahoo.co.jp

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