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自分の「元気」を取り戻すWRAP研究会

現在、世界中で注目されるWRAP(Wellness Recovery Action Plan:略して「ラップ」と呼びます)をご存知ですか。日本語で「元気回復行動プラン」と訳されるWRAPは、困難な感情や行動を自分でチェックして元気を取り戻したり、いい感じの自分を維持したりするために自分で作る行動プランとして、アメリカで開発されたものです。今回はWRAPを学ぶ人たちの集まりとして2005年に久留米市に誕生したWRAP研究会の取り組みをご紹介します。

1.“WRAP” ―― だれもが元気で自分の望む生き方ができる

アメリカのメアリー・エレン・コープランドさんが、彼女自身の精神的困難に対処するための方法を模索する中で考案されたWRAPは、その後、リカバリーについて学ぶ人たちやメンタルヘルスの専門職などの協力を得ながら、多くの人に役立つツールとして育まれてきた。現在はバーモント州ブラトルボロのコープランドセンター(Copeland Center)がWRAPの普及活動に取り組んでおり、今では世界大会が開催されるほど世界中の多くの方々に活用されている。

WRAPは、自分の心や体の声を聴き、自分自身を見つめて、いい感じの自分を保ち続けたり、調子を崩しそうな時や調子が崩れてしまった時に元気を回復したりするための対処法を書き込んだ行動プランのことだ。自分のことを一番良く知っているのは自分自身であるという考えの下、「元気になるため、元気であり続けるために」本人が作るところに特徴がある。ただし、自分でWRAPを作るのが難しい場合には、自分が選んだサポーターや保健福祉の専門職に手伝ってもらったり、WRAPクラスで他の参加者のアイディアを聞きながら作成したりすることもできる。WRAPで作成する行動プランは下記の項目で構成されている。

  • ・元気に役立つ道具箱
  • ・元気を保つために毎日しなければならない日常生活管理プラン
  • ・調子を乱すきっかけ(引き金)となることが起きた時の行動プラン
  • ・調子を崩しつつあるかもしれないサイン(注意サイン)に気づいた時の行動プラン
  • ・調子が悪くなってきているときのサインに気づいた時の行動プラン
  • ・クライシスプラン(自分で判断したり、自分をケアしたり、身の安全を保つことができなくなった緊急状況時のプラン)
  • ・クライシス後のプラン

少し難しそうな気がするかもしれないが、たとえばプラン作成の最初のステップである「元気に役立つ道具箱」は、いい感じの自分でいるために毎日することやしなければならないこと、元気であり続けるためにやること、避けたほうが良いことなどのリストのことだ。もちろん、「道具箱」の中身は人それぞれだが、よく使われる「道具」には、たとえば「友だちと話をする」「運動をする」「昼寝をする」「健康的な食事をとる」「音楽を聞く」などがある。気分が落ち込んだ時に友だちと会って話をしたり、大好きな曲を聞いたりといったことは、知らず知らずのうちにだれもが日常生活の中でやっていることだろう。

「だれでも自分の気持ちや体調に気を配って、少し疲れを感じたときにはゆっくりできる時間をとったりするものですが、仕事や生活の忙しさでいつの間にか自分の気持ちや体調を見つめてケアする機会がなくなってしまいがちです。WRAPクラスの参加者からは『久しぶりに自分を見つめ直す時間になりました』という感想をいただくことがありますが、それこそがWRAPの効果の一つではないでしょうか」と話すのは、WRAP研究会理事で久留米大学文学部社会福祉学科 講師の坂本明子先生。

NPO法人WRAP研究会の誕生

2005年にアメリカのリカバリー研修で困難を経験している本人が自分で健康管理をするというWRAPのリカバリーの考え方に衝撃を受けたという坂本先生。帰国後、久留米大学病院デイケアセンターの元メンバーで地域活動支援センターで当事者スタッフとして働いていた磯田重行さん(WRAP研究会代表)に声をかけ、WRAPに関心をもってくれた人たちとの勉強会が始まった。そして2006年10月にはWRAPの日本語訳テキストを自費出版し、その翌年3月にはアメリカから講師を招いて日本で初めてのWRAPファシリテーター研修会を実施した。ファシリテーターは「まとめ役、進行役」のことだ。WRAPファシリテーターはコープランドセンターの認定資格であり、WRAPクラスを運営することができるので、この研修を受けた仲間たちがその後各地でWRAPクラスや講演会を開催しながらWRAPの普及に努めてきた。

2008年には法人格を取得し、2012年2月には念願だったアドバンスレベルWRAPファシリテーター研修会を開催することができた。これまではファシリテーター研修会を開催するためにはアメリカのコープランドセンターからアドバンスレベルの講師を招かなくてはならず、通訳の手配や費用などが問題となっていたのだ。日本人のアドバンスレベルWRAPファシリテーターが誕生したことで、これまでよりも気軽にファシリテーター研修会を開くことができるようになり、活動の幅は大きく広がったという。現在、WRAP研究会では理事を含め16名の事務局員が活動しており、年に4回、WRAPクラスの集中コースを実施しているほか、全国の病院や地域活動支援センターなどにも講師を派遣してWRAPクラスを開催している。

坂本明子先生(WRAP研究会 理事、久留米大学文学部社会福祉学科 講師)

2005年にアメリカでWRAPに出会い、久留米で研究会を立ち上げてから、あっという間にWRAPは全国から注目されるようになりました。本人が健康管理をするという新しい考え方と、WRAPクラスでは参加者はだれでも「一人の人間」として大切にされる点がその理由かもしれません。WRAPは現在の自分の状態を改善したい、もしくはもっと人生を楽しみたいと考えるすべての方が利用できます。精神的な病気の有無や職業、立場や役職も関係なく、クラスを通じてさまざまな人たちと接することで、他人も自分と変わらない「一人の人間」であり、一人の人としてお互いを認めあうことで「自分は自分のままでいいんだ」と思えるのです。そうすると優しい気持ちになって、自分のことを大切にできるようになり、ほかの人のことも大事にしたくなるのです。 以前、WRAPクラスに参加された方が「WRAPは学ぶものではなく、参加して感じ取るものだということがよく分かりました」と言っておられました。この方は事前にWRAPを勉強されてきたのですが、実際に体験してみると想像していたものと全然違っていたと感激されていたのです。ぜひ、多くの方に一度WRAPクラスを体験していただきたいと思います。

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