自閉スペクトラム症の子どもの特性

自閉スペクトラム症の人たちに共通する特性は対人関係を調整することの難しさこだわりの強さです。それぞれの特性の強さや現れ方は子どもによって違いがあり、ある特性が特に強い場合や、成長に従って特性が変化することもありますが、先天的なものですので、特性を完全になくすことは困難です

対人関係を調整することの難しさ

自閉スペクトラム症の子どもは人に対する関心が弱く、他人との関わり方やコミュニケーションの取り方に独特のスタイルがみられます。相手の気持ちや状況といったあいまいなことを理解するのが苦手で、事実や理屈に基づいた行動をとる傾向にあり、臨機応変な対人関係を築くことが難しく誤解されてしまいがちです。対人関係でのこのような特徴的な行動は幼少期からみられ、年齢とともに現れ方が変化します。

特徴的な行動・エピソード

あやしても目が合わない、反応が乏しい

手を振って「バイバイ」する時、手のひらを自分に向ける

人見知りや親の後追いをしない

言葉を話すようになっても、セリフを棒読みするような話し方、妙に大人びた言葉遣いをするなど、不自然

表情や話しぶり、視線などから相手の気持ちをくみ取ることができない(空気が読めない)

孤立する、受け身過ぎる、一方的過ぎるなど、双方向の対人関係がうまくとれない

表面的な会話だけでは問題が起きにくいが、空気を読めないなどの特徴のために周囲の人のひんしゅくを買ったりすることがある

自分の好きなことを話す時に饒舌になりすぎることがある

友人と親密な関係を築けない

普通に話しているつもりなのに相手を不愉快にさせたり、怒らせてしまったりする

面接などが苦手で仕事に就くことができない

仕事に就いても、融通が利かず、臨機応変に仕事をこなすことができない

こだわりの強さ

自閉スペクトラム症の子どもは幼少期から特定のものごとやルールに強いこだわりを示し、好き嫌いが極端です。自分の関心ややり方、ペースを維持することを最優先したいという志向が強くみられます。また、一部分への興味や関心が強くなり、その領域では良い結果が出やすくなる一方で、そうでない領域は苦手になりやすいことが知られています。

特徴的な行動・エピソード

手足をばたつかせたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたり、おもちゃの車のタイヤを回し続けたりするなど、同じ行動を延々と繰り返す

何かをするときの方法や手順、物の並べ方などにも強いこだわりがあり、いつも同じでないと気が済まない。状況に合わせて柔軟に変更することができない

電車や昆虫、恐竜、数字、記号、地図などの特定のものごとに強い興味や情熱を持つが、その範囲は狭い

興味のあることでは優秀な結果を出すが、興味のないことはほとんど手を付けない

順番や競争などで一番になれないとパニックを起こしたり、相手とトラブルになったりするほど強いこだわりをみせることがある

インターネット、携帯、ゲーム、アニメなどへの没頭

一つのことに集中しすぎて周囲がみえなくなる

スケジュール管理が上手くできない

成長に従ってこだわりが趣味などに変化することがあります。

こだわりの対象が変わると、以前の対象へのこだわりは減ることがあります。

その他の特性

すべての子どもに当てはまるわけではありませんが、自閉スペクトラム症の子どもの中には、周囲が気にしないようなちょっとした物音に過敏に反応する、寒い日に薄着をしても気にならないといった感覚のかたよりや、体の動かし方が不器用で、運動がぎこちなく苦手など、ほかにもさまざまな特性がみられる場合があります。

これらの特性のために本人は「生きづらさ」を感じることもあります。一方で、「人の意見にぶれることなく課題を遂行する」などの形で、特性がむしろその人の強みになることもあります。「高い記憶力」や「好きなことへのこだわり」といった特性を発揮して仕事や趣味で充実した生活を送っている方もたくさんいます。このように、自閉スペクトラム症の特性は、それだけでは必ずしも生活上の支障になるとは限りません。「病気」や「症状」というよりも、その子がもって生まれた特有の性質と考え、個々の特性を理解して、「生きづらさ」を軽減しながら得意なことを伸ばすサポートが大切です。

「個性」と「障害」の違い

対人関係やこだわりの特性があることによって生活に支障を来していれば、「自閉スペクトラム症」と診断されます。この場合、行政上は「障害」として教育や就労などにおける特別な配慮や福祉的サービスの対象となります。逆に、特性があっても生活に支障を来していなければ診断されませんし、行政上の「障害」とみなされることもありません。特性そのものは病気や症状ではなく、その人特有の性質であり、生まれつきの特有の脳の働き方を反映した「個性」と捉えることもできます。